グループ内で商品や固定資産を売買すると、売った会社には利益が計上されます。しかし、その資産がまだグループ内に残っている場合、グループ全体から見るとその利益はまだ実現していません。この記事では、未実現利益の考え方と、ダウンストリーム・アップストリームの違い、棚卸資産と固定資産の仕訳の例を解説します。
未実現利益とは
未実現利益とは、グループ内の会社どうしで資産を売買したときに、売った会社が上乗せした利益のうち、期末にその資産がまだグループ内に残っている部分をいいます。
グループ全体をひとつの会社とみなすと、グループ内での売買は、会社の中で資産の置き場所を移しただけです。利益が実現するのは、グループの外部に販売したときです。そのため、期末にグループ内に残っている資産に含まれる利益は、連結上で消去し、資産の金額も売った会社が取得したときの金額に戻します。
未実現利益の消去では、「どの会社から、どの会社に売ったか」によって、消去した利益を誰が負担するかが変わります。親会社から子会社への売却をダウンストリーム、子会社から親会社への売却をアップストリームといいます。
ダウンストリームとアップストリーム
| ダウンストリーム | アップストリーム | |
|---|---|---|
| 売買の方向 | 親会社 → 子会社 | 子会社 → 親会社 (子会社どうしの売買を含む) |
| 消去する額 | 未実現利益の全額 | 未実現利益の全額 |
| 誰が負担するか | 全額を親会社の持分が負担 | 親会社と、売った子会社の非支配株主が、その子会社の持分比率に応じて負担 |
アップストリームの場合、利益を計上したのは非支配株主がいる子会社なので、消去した利益のうち非支配株主の持分に相当する額は、非支配株主持分から減らします。
設例:棚卸資産の未実現利益
設例
- グループ内の商品売買の利益率は、売価の20%
- 期末に、仕入れた側の会社の在庫のうち500が、グループ内から仕入れた商品である
- 未実現利益は、500 × 20% = 100
- 説明を簡単にするため、税効果は考慮しない
① ダウンストリーム(親会社P社 → 子会社S社)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上原価 100 | 商品 100 |
② アップストリーム(P社が80%を持つ子会社S社 → 親会社P社)
未実現利益の全額を消去したうえで、非支配株主の持分(20%)に相当する20を、非支配株主持分から減らします。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売上原価 100 | 商品 100 |
| 非支配株主持分 20 | 非支配株主に帰属する当期純利益 20 |
翌期の処理(開始仕訳と実現)
前期末に消去した未実現利益は、翌期の開始仕訳で「利益剰余金(期首残高)」を使って引き継ぎます。その商品が翌期にグループの外部に販売されれば、利益は実現したことになるので、前期に消去した利益を翌期の利益として戻します。ダウンストリームの設例では、次のようになります。
| 内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 開始仕訳 | 利益剰余金(期首残高) 100 | 商品 100 |
| 実現 | 商品 100 | 売上原価 100 |
この2つをまとめて、「利益剰余金(期首残高)100/売上原価 100」と仕訳することもあります。そのうえで、当期末に残っている在庫について、あらためて未実現利益を消去します。
アップストリームの場合は、開始仕訳で「非支配株主持分 20/利益剰余金(期首残高)20」もあわせて引き継ぎます。商品が外部に販売されて利益が実現したときは、「非支配株主に帰属する当期純利益 20/非支配株主持分 20」として、非支配株主の負担分も戻します。
固定資産の未実現利益
グループ内で土地や建物などの固定資産を売買した場合も、売った会社が計上した売却益は未実現利益として消去します。たとえば、P社が帳簿価額300の土地を子会社S社に500で売却した場合は、次のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 固定資産売却益 200 | 土地 200 |
土地は減価償却をしないので、グループの外部に売却されるまで、未実現利益の消去を開始仕訳で毎期引き継ぎます。
建物や機械などの減価償却資産の場合は、買った会社が未実現利益を含んだ金額をもとに減価償却費を計上しています。そのため、毎期、未実現利益に対応する減価償却費を取り消し(未実現利益の実現)、その資産がグループの外部に売却または除却されるまで、この調整を続けます。売却や除却のときにまとめて調整する方法は認められていないので、毎期の調整が必要です。
実務で注意したいポイント
- 在庫の情報を集める:各社の期末在庫のうち、グループ内から仕入れた金額を、連結パッケージで仕入先ごとに集めます。
- 利益率を決めておく:未実現利益の計算に使う利益率を、売った会社ごと・商品グループごとなどに決め、毎期同じ方法で計算します。
- 税効果を忘れない:未実現利益の消去は、連結上の税効果会計の対象になります。消去した利益に対して売った会社がその年に納めた税金は、繰延税金資産として計上します。このとき使う税率は、買った会社の税率ではなく、売った会社の売却した年の税率です。この繰延税金資産は、売った会社のその年の課税所得を上限とし、回収できるかどうかの判断や、税率が変わったときの見直しは行いません。アップストリームの場合は、税効果の額も非支配株主の持分に応じて配分します。
- 固定資産は台帳で管理する:グループ内で売買した償却資産は、未実現利益と毎期の実現額を資産ごとに管理しておくと、開始仕訳や除却時の処理を間違えにくくなります。
よくある質問
未実現利益の計算には、どの利益率を使いますか?
一般的には、売った会社がグループ内の会社に販売したときの売上総利益率を使います。グループ内の取引だけ価格の決め方が違う場合は、その取引の実際の利益率を使います。どの利益率を使うかは、毎期同じ方法で継続して適用することが大切です。
金額が小さい場合も、未実現利益を消去する必要がありますか?
未実現損益の金額に重要性が乏しい場合は、消去しないことができます。ただし、重要性の判断は、グループ全体の利益への影響などを踏まえて行う必要があります。
グループ内の取引で損失が出ている場合も、消去しますか?
未実現損失も原則として消去します。ただし、売却した会社の帳簿価額のうち回収できないと認められる部分は、消去しません。
本記事は、日本の会計基準にもとづく一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、会計コンサルティングでご相談いただけます。