エールアカウンティング株式会社

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連結会計の解説 07

債権債務・内部取引の消去の仕訳と実務のポイント

グループ内の取引高と債権債務の相殺消去について、消去の対象、仕訳の例、貸倒引当金の調整、未達取引・手形の割引などの実務のポイントを公認会計士が解説します。

監修:公認会計士・税理士 鯨井 久敬

連結決算では、グループ内の会社どうしの取引や、その結果として残っている債権・債務を消去します。この記事では、消去する理由と対象、仕訳の例、貸倒引当金の調整や未達取引などの実務のポイントを解説します。

内部取引を消去する理由

連結財務諸表は、グループ全体をひとつの会社とみなして作成します。ひとつの会社の中での部署間のやり取りが売上や債権にならないのと同じように、グループ内の会社どうしの取引は、グループ全体から見れば外部との取引ではありません。

そのため、グループ内の取引高(売上と仕入、受取利息と支払利息など)と、グループ内の債権と債務(売掛金と買掛金、貸付金と借入金など)は、連結上で相殺消去します。消去しないと、グループ全体の売上や資産・負債が実態より大きく表示されてしまいます。

消去の対象

区分主な組み合わせ
取引高売上高 ⇔ 売上原価(仕入高)
受取利息 ⇔ 支払利息
受取手数料・受取賃貸料 ⇔ 支払手数料・支払家賃・賃借料
受取配当金 ⇔ 剰余金の配当(投資と資本の消去の中で処理)
債権債務売掛金 ⇔ 買掛金
受取手形 ⇔ 支払手形
貸付金 ⇔ 借入金
未収入金・未収収益 ⇔ 未払金・未払費用
前払費用 ⇔ 前受収益
前渡金 ⇔ 前受金

グループ外の会社を経由した取引でも、実質的にグループ内の取引であることが明らかな場合は、消去の対象になります。

設例:取引高と債権債務の消去

設例

  • P社は子会社S社に商品を1,000で販売した(S社はその商品をすべてグループ外に販売済み)
  • 期末に、P社はS社に対する売掛金300がある(S社は買掛金300)
  • P社は、当期に初めて、S社に対する売掛金に2%の貸倒引当金6を設定した(前期末の残高はない)
内容借方貸方
① 取引高の消去売上高 1,000売上原価 1,000
② 債権債務の消去買掛金 300売掛金 300
③ 貸倒引当金の調整貸倒引当金 6貸倒引当金繰入額 6

S社が期末に商品を在庫として持っている場合は、さらに未実現利益の消去が必要になります。

貸倒引当金の調整

グループ内の債権を消去すると、その債権に対して設定していた貸倒引当金も不要になります。そのため、消去した債権に対応する貸倒引当金を減らし、同じ額の貸倒引当金繰入額を取り消します(設例の③)。

  • 翌期の開始仕訳では、前期末の調整額を「利益剰余金(期首残高)」で引き継ぎます。
  • 債権を持っているのが、非支配株主がいる子会社の場合は、調整によって増えた利益(税効果を適用する場合は、税金の影響を差し引いた後の額)のうち非支配株主の持分に相当する額を、非支配株主持分に振り替えます。翌期の開始仕訳では、この振替も引き継ぎます。
  • 貸倒引当金の調整は、税効果会計の対象になることがあります。各社の決算で計上した貸倒引当金が税務上の損金になっているかどうか、また各社で繰延税金資産を計上しているかどうかによって、連結での処理が変わります。

注意が必要なケース

未達取引

期末に、一方の会社は取引を計上しているのに、もう一方の会社はまだ計上していないことがあります(商品が輸送中、送金が相手に届いていないなど)。これを未達取引といいます。連結上は、まだ計上していない側で取引を計上する処理(未達取引の整理)をしてから、債権債務や取引高を消去します。未達の商品を連結上で棚卸資産として計上した場合は、その在庫に含まれる未実現利益の消去も必要になります。

グループ内の手形を銀行で割り引いた場合

グループ会社が振り出した手形を、受け取った別のグループ会社が銀行で割り引いた場合、グループ全体から見れば、手形を担保にして銀行から借り入れたのと同じです。連結上は、割り引いた手形の金額を借入金として表示します。割り引いたときに計上した手形売却損は、借入に伴う利息として支払利息などに振り替えるのが一般的です。

外貨建ての取引

海外子会社との取引では、換算に使う為替レートの違いによって、取引高や債権債務の円換算額が一致しないことがあります。海外子会社の親会社との取引による収益・費用は、親会社が換算に使ったレートで換算し、それによって生じた差額は為替差損益として処理します。差異の原因が為替によるものか、計上漏れなど別の原因によるものかを確かめてから処理します。

照合を効率よく進めるポイント

  • 連結パッケージで相手先ごとの明細を集める:各社から、グループ会社ごとの取引高と債権債務の明細を、同じ様式で集めます。
  • 勘定科目の組み合わせを決めておく:どの科目とどの科目を相殺するかをあらかじめ決めておくと、照合がスムーズになります。
  • 差異の許容範囲と対応ルールを決める:差異があった場合の確認先や、処理の方法をあらかじめ決めておきます。
  • 月次で照合する:期末にまとめて照合するのではなく、月次や四半期ごとに照合して差異を解消しておくと、決算期間中の作業を減らせます。

よくある質問

グループ会社間で債権と債務の金額が合わない場合は、どうすればよいですか?

まず差異の原因を調べます。多いのは、一方だけが計上している未達取引、計上する時期のずれ、為替レートの違い、相手先や勘定科目の誤りです。未達取引は連結上で計上してから消去し、誤りがあれば修正します。そのうえで一致した金額を消去します。

消費税はどのように扱いますか?

税抜経理を採用している場合、売上高や仕入高などの取引高は税抜の金額で消去します。売掛金・買掛金などの債権債務は、帳簿に計上されている税込の金額で消去します。

グループ内の取引の照合は、いつ行うのがよいですか?

期末だけでなく、月次や四半期ごとに照合しておくのがおすすめです。差異の原因を早めに見つけて解消しておけば、期末の連結決算の作業時間を大きく減らすことができます。

監修:鯨井 久敬(公認会計士・税理士)

エールアカウンティング株式会社 代表取締役。多くの企業の連結決算業務の支援経験を活かし、連結会計システム「Consoleasy」を開発。連結決算アウトソーシングや会計コンサルティングを通じて、企業の経理・財務を支援している。

本記事は、日本の会計基準にもとづく一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、会計コンサルティングでご相談いただけます。

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