連結決算で最初に行う、最も基本的な連結修正仕訳が「投資と資本の消去」です。資本連結とも呼ばれます。この記事では、投資と資本の消去を行う理由、子会社の資産・負債の時価評価、のれんと非支配株主持分の計算、支配を獲得した後の処理までを、設例を使って解説します。
投資と資本の消去とは
投資と資本の消去とは、親会社が持っている子会社株式(投資)と、それに対応する子会社の資本を相殺消去する手続です。
親会社の個別財務諸表には、子会社への出資が「子会社株式(関係会社株式)」として計上されています。一方、子会社の個別財務諸表には、同じお金が資本金などとして計上され、そのお金で取得した資産が載っています。これらを単純に合算すると、グループ内で同じ資金を二重に計上することになります。そのため、親会社の投資と子会社の資本を相殺消去し、子会社の資産・負債だけが連結財務諸表に残るようにします。
投資と資本の消去は、原則として、親会社が子会社の支配を獲得した日(支配獲得日)の子会社の資本を基準に行います。支配獲得日が子会社の決算日以外の場合は、その前後の決算日(四半期決算日や中間決算日などを含む)に支配を獲得したものとみなして処理することもできます。ただし、みなす日は、買収の主な条件が合意されて公表された日より後でなければなりません。
子会社の資産・負債の時価評価
投資と資本の消去を行う前に、子会社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価します。子会社の資産・負債は、すべて支配獲得日の時価で評価する方法(全面時価評価法)によります。
- 時価と帳簿価額との差額(評価差額)は、子会社の資本として扱います。
- 評価差額には税効果会計を適用し、繰延税金資産・負債を計上します。このときの税効果額は法人税等調整額にはせず、評価差額から直接差し引きます。そのため、子会社の資本に加える評価差額は、税効果を差し引いた後の金額になります。
- 時価評価は連結上だけで行い、子会社の帳簿は修正しません。
たとえば、子会社が帳簿価額200の土地を持っていて、支配獲得日の時価が300であれば、連結上は土地を100増やし、同額を評価差額として子会社の資本に加えます。
のれんと非支配株主持分
親会社の投資と子会社の資本は、ぴったり一致するとは限りません。また、親会社が子会社株式の100%を持っていない場合は、残りの持分を他の株主が持っています。そこで、次のように処理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 親会社の持分 | 子会社の資本(評価差額を含む)× 親会社の持分比率 |
| 非支配株主持分 | 子会社の資本(評価差額を含む)× 非支配株主の持分比率 連結貸借対照表の純資産の部に表示します |
| のれん | 投資額が親会社の持分を上回る場合の差額。無形固定資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法で規則的に償却します。ただし、金額に重要性が乏しい場合は、発生した年度の費用とすることもできます |
| 負ののれん | 投資額が親会社の持分を下回る場合の差額。まず資産・負債の把握や時価の評価が適切かを見直し、それでもなお生じる場合に、発生した事業年度の利益として処理します |
設例:支配獲得日の仕訳
設例
- P社は、S社の株式の80%を1,000で取得し、S社を子会社とした
- 支配獲得日のS社の資本は、資本金500、利益剰余金300
- S社が持つ土地(帳簿価額200)の支配獲得日の時価は300
- 説明を簡単にするため、税効果は考慮しない
① 子会社の資産の時価評価
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 土地 100 | 評価差額 100 |
② 投資と資本の消去
時価評価後のS社の資本は、500+300+100=900です。親会社の持分は900×80%=720、非支配株主持分は900×20%=180、のれんは1,000-720=280となります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 資本金 500 利益剰余金 300 評価差額 100 のれん 280 | S社株式 1,000 非支配株主持分 180 |
支配獲得後の処理
支配を獲得した後の連結決算では、次のような処理が毎期必要になります。
開始仕訳
連結修正仕訳は子会社や親会社の帳簿には記帳されないため、前期までに行った投資と資本の消去などを、毎期「開始仕訳」として繰り返します。このとき、前期までの損益に関する項目は「利益剰余金(期首残高)」、資本金や非支配株主持分などの純資産の項目も、それぞれの期首残高として処理します。
子会社の利益の按分
子会社が支配獲得後に計上した当期純利益のうち、非支配株主の持分に相当する部分は、非支配株主持分に振り替えます。設例のS社が、翌期に当期純利益200を計上した場合は、次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 非支配株主に帰属する当期純利益 40 | 非支配株主持分 40 |
のれんの償却
設例ののれん280を10年で定額法により償却する場合、毎期28を償却します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| のれん償却額 28 | のれん 28 |
子会社の配当
子会社が配当を行った場合、親会社が受け取った配当金はグループ内の取引なので、子会社の配当と相殺消去します。非支配株主に支払われた配当は、非支配株主持分を減らします。
実務で注意したいポイント
- 段階取得:支配を獲得する前からその会社の株式の一部を持っていた場合、連結財務諸表上、その株式も支配獲得日の時価で評価し直します。時価と、支配獲得直前の帳簿価額(持分法を適用していた場合は持分法による評価額)との差額は、段階取得に係る損益として処理します。なお、親会社の個別財務諸表では評価し直しません。
- 取得関連費用:子会社株式を取得したときの仲介手数料などの付随費用は、親会社の個別財務諸表では株式の取得価額に含めますが、連結財務諸表では発生した年度の費用として処理します。そのため、連結上の投資額は付随費用を除いた金額になります。
- 支配獲得後の追加取得・一部売却:支配が続いている間に子会社株式を追加で取得したり、一部を売却したりした場合、親会社の持分の変動によって生じた差額は、資本剰余金として処理します。
- 開始仕訳の管理:時価評価、のれん、非支配株主持分などは、子会社の帳簿に載らないため、毎期正しく引き継ぐ必要があります。支配獲得時の資料と計算の根拠は、監査への対応のためにも整理して保管しておきましょう。
よくある質問
子会社の資産・負債の時価評価は、子会社の帳簿にも記帳しますか?
記帳しません。子会社の資産・負債の時価評価と評価差額の計上は、連結財務諸表を作成する上でだけ行います。そのため、毎期の連結決算で開始仕訳として引き継ぐ必要があります。
100%子会社を設立した場合も、投資と資本の消去は必要ですか?
必要です。親会社の出資額(子会社株式)と子会社の資本金などを相殺消去します。設立の場合は、通常、投資額と資本の額が一致するため、のれんや非支配株主持分は生じません。
投資額が子会社の資本より小さい場合はどうなりますか?
親会社の持分に相当する子会社の資本より投資額が小さい場合、その差額は負ののれんとなります。負ののれんは、資産・負債の把握や時価の見直しを行った上で、なお生じる場合に、発生した事業年度の利益として処理します。
本記事は、日本の会計基準にもとづく一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、会計コンサルティングでご相談いただけます。